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流れる 〜呪術廻戦 五条悟※R18〜

第14章 ●逃げる●


「今、悟って呼んでくれたね。」

「…………」

押し黙る私。

「もっかい言ってよ。」

にじり寄る悟。

「ヤダ」

「お願い。」

「ヤダ。」

「どうして?」

「どうしても。」

「いじわるぅ。」

「どっちが。」


このやりとり、前にもあった気がする。


「じゃあ、抱きしめてもいい?」

「何で?」

「可愛いから。」

そんな訳ない。

「可愛くない。」

言い返す。

「可愛いよ。」

やめて。

「可愛くない。」

再び言い返す。

「どうしたの?」

訳を聞かれた。

「どう考えてもミサト先輩の方が可愛いもん。」

自分で言っておいて悲しくなった。
あの時の辛い気持ちが蘇ってきた。

熱くなってくる目頭。

目を閉じれば涙が零れ落ちてしまいそう。

必死に瞬きを堪える。

だけど余計に涙が溜まってきて、思わず瞼を閉じる。

頬を伝う一筋の涙。


すると、悟が長い指で涙を拭った。


触れられた頬が熱い。


「泣かないで、恋ちゃん。俺は、お前の方が好きだよ。初めて2人で任務に行った時からずっと恋ちゃん一筋。」

「他の女に走ったくせに。」

「禁欲の間も好きだからしょっちゅう逢いに行ったんだよ。だけど、惚れた女を前に何もできないのが辛くって。俺、3ヶ月ちゃんと我慢してたのに。それなのに先輩の誘惑に負けて。本当、ごめん。」


サングラスがズレて綺麗な瞳が私を見つめる。


やめて。


ドキドキしすぎて心臓とまりそう。


息もできなくなる。


再びこぼれ落ちる涙。


「おいで。」

悟が立ち上がり、両手を広げた。

久しぶりに聞くその言葉に体が勝手に動く。

そしてぬくもりに包まれた。

長い腕が私の背中に回り、広い胸に顔を埋める。



涙が止まらない。


本当はずっとこうしたかったのに。


素直になれなかった。


「好きだよ、恋。」

優しい声が降ってくる。
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