第14章 ●逃げる●
「恋、これ新発売の和菓子なんだ。食べる?」
「うんっ!食べる。うわぁ、綺麗なお菓子だね、五条。」
「ほら、食えよ。」
「ありがと……うん、おいひい。」
「マジで……うん、上手い!」
「五条、口の横にあんこついてる。」
「えっ?どこ?」
「ここ、ほら。」
悟の顔を指で撫でてあんこを取り、自分の口へ運んだ。
「そうだ五条、明日ガトーショコラ焼くんだけど食べる?」
「食べる食べる。」
次の日、久しぶりに悟がウチに来た。
硝子も呼んだ。
傑は任務で留守だった。
「美味そう!いっただきまーす。」
「どう?」
「美味い!めちゃくちゃ美味い!」
「よかったぁ。」
「苦味があって、甘いもの嫌いな私でも食べられるよ。」
いつもはお菓子を嫌がる硝子だけど、コレは気に入ってくれたみたいだった。
その時硝子の携帯が鳴った。
「ごめん、呼び出しだ。保健室行ってくる。」
硝子はそう言うと慌てて出ていった。
突然、悟と2人きりになった。
ドキドキする。
すごくドキドキする。
どうしよう。
バレるかな?
緊張してるって。
「ガトーショコラまだあるけどいる?」
沈黙が嫌で話しかけた。
「うん。」
「ちょっと待って。」
立ち上がり歩こうとした瞬間、悟に手首を掴まれた。
「何?五条。」
「ねぇ、悟って呼んでくれない?」
「ヤダ。」
「お願い。」
「絶対ヤダ。」
「俺の事好き?」
「キライ。」
「俺は恋が好きだよ。」
「私は悟が大っ嫌い。」
言ってからしまったと思った。
時すでに遅し。