第14章 ●逃げる●
「恋」
「何?」
「先輩にはもう会わないって伝えたから。
それに、あの人本当は婚約者がいて、その人のところへ戻るんだって。」
「婚約者?」
「ああ。俺もさっき知った。」
「騙されてたの?」
「俺がバカだった。許してくれ。恋、お前が好きだ。」
コイツ、マジで何言ってんの?
他の女とヤッた事に変わりないでしょ?
「私にちょっかい出してこんなに好きにさせたくせに、どうして他の女作ったの?」
「だからさ、今からお前を俺の女に…」
最悪。バカすぎて泣けてきた。
「遅いんだよっ!バカ男!」
泣きながら言ってドアをバタンと閉めた。
その夜は寝付けなかった。
何が今から俺の女にだ。
段々腹立ってきた。
こういう時は甘いもの作らなきゃ!
こうして、夜中からアップルパイ作りが始まった。
「おはよう。朝っぱらから甘ったるい匂いさせてんね。」
「硝子、おはよ。」
朝になり、硝子がやってきた。
「今、そこで五条に会った。こんな時間からアップルパイ作ってるのはあんたのせいだよって言っといた。」
「アップルパイ、悟好きだろうな…あげないけど。」
「あげなくていいよ。あんなクズには。」
それからは出来るだけ悟を避けた。
呼び方も五条に戻した。
でも、何故かいつも近くにいる。
出先でも気づいたら近くにいる。
硝子がストーカーだと言ってた。
夏油と2人で出かけた時なんて、後ろからつけて来てたから思いっきり睨んでやった。
そんな生活が3ヶ月程続いた頃、2人での任務の指令が下った。
私情は挟まないって宣言した。
だけど、正直私は自信ない。
悟にもし何かあったら私情挟みまくると思う。