第13章 ●ハマる(五条の場合)●
「本当だ。夏油、ありがと。五条、行くよ。」
恋はサッと車から降りて走り始めた。
「ちょっと待てよっ!」
追いかける俺。
「ヤダねっ!」
逃げる恋。
何だか今の2人の関係性を表しているようだった。
その出来事をきっかけに、恋が俺に対しても傑や硝子と同じように接してくれるようになった。
結局、傑の事をどう思っているかはわからなかったけど、怒ったって事は好きではないって事だよな?と、自分を納得させた。
「恋、これ、新発売の和菓子なんだ。食べる?」
「うんっ!食べる。うわぁ、綺麗なお菓子だね、五条。」
「ほら、食えよ。」
「ありがと……うん、おいひい。」
「マジで……うん、上手い!」
「五条、口の横にあんこついてる。」
「えっ?どこ?」
「ここ、ほら。」
恋が俺の顔を指で撫でてあんこを取り、自分の口へ指を入れてニコッと笑った。
相変わらずエッロいなぁ。
恋の笑顔がまた見られる事が幸せだった。
「五条、明日ガトーショコラ焼くんだけど食べる?」
「食べる食べる。」
次の日、久しぶりに恋の部屋へ入った。
硝子も来ていた。
傑は任務でいなかった。
「美味そう!いっただきまーす。」
「どう?」
俺が食べるのをじっと見てる恋。
そんなに見つめられたら照れるじゃん。
「美味い!めちゃくちゃ美味い!」
「よかったぁ。」
俺が褒めると嬉しそうに顔を綻ばせる恋。
「苦味があって、甘いもの嫌いな私でも食べられるよ。」
硝子が言った。
コイツは酒豪だからな。
その時硝子の携帯が鳴った。
「ごめん、呼び出しだ。保健室行ってくる。」
硝子はそう言うと慌てて出ていった。
予期せずして恋と2人きりになった。
俺の胸は張り裂けそうだった。