第13章 ●ハマる(五条の場合)●
硝子が低い声で言った。
「お前には関係ねぇだろ?」
「関係ある!」
「あぁ?お前、誰に向かって言ってんの?おーい、恋!いるんだろ?出てこいよ。話がある。」
「やめて!五条。ミサト先輩とどうなってるのか私に教えて。」
「お前何言ってんだよ?俺はアイツに話があるんだよ。」
すると、奥から恋が出てきた。
「悟。」
「恋、お前先輩に何言った?」
「えっ?な、にって……」
「お前、俺の事、何とも思ってないって言ったの?」
サングラスを外して見つめる。
怯えたような瞳。
「は、い。」
「ふーん。そっか。」
バタン
ドアを乱暴に閉めた。
悔しかった。
こんな振られ方あるか?
高専を出て、その足で先輩のマンションへ行った。
「ミサト」
「悟、おいで。」
俺は、先輩を抱いた。
恋を忘れるために。
あの怯えたような恋の瞳が脳裏に焼き付いて離れない。
怯えたような瞳、俺はその意味を履き違えていた。
その日から一週間、先輩のところに居座り、授業をサボった。
傑からは毎日電話がかかってきたけど無視した。
恋からはかかって来なかった。