第13章 ●ハマる(五条の場合)●
恋には変わらず会いに行った。
恋の事は好きだ。
だけど、エッチ出来ないのは辛すぎる。
先輩とヤッてるのに、恋の事が好きでたまらない。
恋の禁欲が明ける日、薔薇の花束を抱えて会いに行った。
恋に告って、恋からも好きだと言われて舞い上がった。
先輩の事ははすっかり頭の中から消えていた。
それが伝わったかのように、高専に先輩がやってきた。
よりによって俺と恋が一緒にいる時に。
「五条!」
いきなり呼ばれ、驚いて振り返った。
「ミサト……せ、んぱい?何で?」
「用事で近くまで来たからちょっと寄ってみたの。久しぶりに夏油や家入にも会いたいし。あら?この子?例の転入生は。」
おいおい、例のはマズイだろ。
俺が先輩に話したってバレるじゃん。
「そうだよ。」
嫌そうに答えた。
「なあに?あたしに向かってその口のきき方は。」
先輩が俺の腕にからみつく。
やめてくれ。
恋の前でだけはやめてくれ。
「やめろよな。」
思わずキツく言う。
「もぉ、悟ったら何なのよ。初めまして、私はここの卒業生の山本ミサトでーす。」
「初めまして。龍恋です。」
「あなた、本当に高専生?ずいぶん可愛いらしいわね。五条と並んでたら凸凹コンビじゃない。アハハ。」
先輩、やめてくれよ。
「先輩、傑達なら保健室だよ。恋、おいで。」
思わず恋の手を強めにつかんだ。
「悟、痛いよ。どうしたの?」
廊下の角を曲がり、先輩から見えなくなったところで恋に聞かれた。
「何でも…ないよ。」
言えるわけない。
「そう。わかった。」
恋はそれ以上聞いてこなかった。