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鬼殺の謳(仮)

第1章 第一章


「助けていただいてありがとうございます」

 まだ少し掠れる声で礼を言うと、天元は優しく笑った。

「派手に声枯れてんな。お前ら、飲み物と消化に優しいもん持ってきてくれ」

 天元が3人の妻にそう指示すると彼女らは頷いて部屋から出て行った。

「…大丈夫か?」

数分の沈黙の後、天元がゆっくりと話しかけてきた。

「‥何がですか?」

 この"大丈夫か?"はきっと身体の心配ではなく、襲われたという事実を少年が受け止められているかを聞いているのだと、少年はわかっていた。

「男であっても襲われるのは辛いし傷つくだろ」

「…確かに………。驚きましたし、体も心もボロボロです」

 先程のハキハキとした声ではなく穏やかな声で天元は話す。
 天元の言葉に少年は正直に答えた。初対面でも優しさの裏返しであのような仕打ちをされてしまっては傷つかないわけがない。

「…でもあなたに助けていただけてよかったです。あのままあなたに助けられなければ俺はどうなっていたかわかりません」

 あのまま地面に転がった状態で炎天下にさらされていたら最悪の場合死んでいたかもしれない。

「礼にはおよばねぇよ。なんならもう少し早く見つけてやりたかったくらいだ」

 天元は少年の髪にそっと触れた。その表情は心なしか申し訳なさそうである。

「そういやお前の名は?」

「喜世乃。東雲喜世乃です」

「喜世乃か。良い名前じゃねぇか」

天元と話していると複数の足音が聞こえ、雛鶴たちが戻ってきたとわかる。

「飲み物とお粥持ってきましたよ」

 最初に入ってきたのは須磨で手には粥と飲み物を乗せたお盆を持っていた。

「食べられそうなら食べてくださいね」

 天元の後ろに雛鶴たちは座った。

「ありがとうございます」

 お盆を膝の上に乗せて手を合わせて"いただきます"といい一口分を息を吹きかけて覚ましてから口に入れた。

「…美味しい」

 お粥の温度は別の温かみを感じ、少年は心が満たされるような気がした。その優しい味に少年から思わず笑みが溢れる。その様子をみた天元と雛鶴らからも笑みが溢れた。

「…本当に美味しいです。ありがとうございます」

 心温まる味に少年はあっという間にお粥を食べ切り、渇いた喉を潤すために冷えたお茶を飲んだ。
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