第1章 第一章
身体を包む柔らかな感触に少年は閉じていた目をゆっくりと開いた。自分の視界に映るのは目覚えのない天井。自分は山で倒れたのではなかったかとぼんやり考えていると、自分が寝かされている部屋の襖がゆっくりと開いた。
「あら、目が覚めたのね!」
「て、天元様に知らせなくちゃ…!」
「気分はどうだい?」
まだぼんやりとしている頭で精一杯考えられたのは部屋の中に女性が入ってきたことだけで、質問に対して答えることができなかった。
目線だけを部屋に入ってきた人物に向ければ、三人の女性のうち1人が慌てて部屋から出て行ったのがわかる。1番最初に声をかけてくれた女性が少年の側に座り、顔色を伺って手に持っていた桶を置いた。
「熱が出ているのよ。ぼんやりするでしょう?今おでこの手ぬぐいかえるわね」
少年の額に乗せられたぬるくなってしまった手ぬぐいを持ってきた桶に入っている水に入れて軽く揉んでから絞り、手際よく少年の額に冷えた手ぬぐいを乗せた。
「あ…りがとうござい……ます」
礼を言おうと口を開くと掠れた声が出る。相手に言葉が伝わったかどうかはわからないが少年が出せる精一杯の声であった。
「お礼なんていいのよ」
優しい笑みを浮かべて女性はそう言った。どうやら言葉は伝わっていたみたいだ。
「身体はまだ動かせそうにないかい?」
キリッとした目鼻立ちの女性が問いかけてきた。それに答えるようにゆっくりと首を横に振った。
「天元様…!早く早く」
廊下から先ほど部屋を出て行った女性の声が聞こえる。誰かを呼んで戻ってきたようだ。
まもなく女性が部屋に入り、それに続いて背の高い男性が入ってきた。
「お。思ったより顔色いいじゃねぇか」
そういった男性の左目は派手な化粧がほどこされ、顔立ちだけでも目を引くのにその化粧により、さらに彼に目を引く。
「気を失う前のことは覚えてるか?」
そう聞かれ少年はぼんやりする頭で考えた。山で強姦にあったことを思い出すと口に出したくはないため、頷いた。
「そうか。俺は宇髄天元。こいつらは俺の嫁で雛鶴、まきを、須磨だ。ド派手に良い女だろ」
宇髄天元といった彼と妻3人をそれぞれ見つめる。
「助けていただいてありがとうございます」
そしてこの家の主である天元にそういえば、天元様には少年の側に腰を下ろした。