第3章 刺客
男は木を伝って走りながら、唇に手を当てた。
(なんで俺あのお嬢さんにキスなんてしたんだろ…
なんかなぁ…吸い込まれたんだよなぁ…
まぁ美人さんだったし
いいか)
そう思いながら、唇から手を離し、門へ降り立った。
城門(詩人の門)ーー…
「何?!
今後白雪どのが来ても
門を通すな!?」
「何故!?」
「待て待て
白雪どののこの門からの入城は
ゼン殿下直々に客人として許可されているんだぞ!?」
「それは取り消された」
「え!?嘘!?」
「殿下より伝令だ」
男は門兵達に紙を見せた。
そこには…
「“白雪の扱いに対し
臣下より非難の声が上がったため
これまで与えていた入城の許しは
二度と無いものとする”」
男は紙に書いてある事項を読み上げた。
「そんな
急に…」
門兵は狼狽えるが、男は続けて
「以上、口を挟むなとのこと
ご決断なされた殿下のご心痛
お察しするよう
よろしくお願いする
では」
男はそう告げて門から立ち去ろうとすると
「おい、待ってくれ」
門兵が呼び止めた。
「ならば殿下にお伝えしなければ........!」
「今し方
忘れ物を取りに戻られた白雪どのを
お通ししたばかりだと!!」
「................なに........!?」
男は驚いたように声を上げた。
(自分の名前が聞こえたから…
何かと思ったけどーー…
ゼンが
非難されてる…!?
でも、今の伝令…
................…)
「まさか
殿下のところに…」
ガサッ…
「!?」
男が物音がした方向をむくと、赤い髪をした人影が見え、走り去るところだった。
(赤髪!!
聞かれたか…!!)