第9章 ラジ王子の訪城
「?」
「みろ
お前がどれほど惚れ込んでいる相手なのか
時間をかけずともわかったぞ」
うぐっ・・・
ゼンは顔を赤くして言葉を詰まらせた。
「まぁ
それはそれとして
お前の心など、関係の無い話だ
政略的価値のある令嬢が
他にいるしな
外聞はあの娘に赤い髪以上の価値を期待し
それがないとわかれば
皆がお前を見る目は冷ややかになる」
フッ・・・ガンッ!!
ゼンが油断した間に、イザナは1歩踏み込んだ。
ゼンはすんでのところで受け止めた。
「実に具合が悪いな?ゼン」
イザナは、薄く笑みを浮かべてゼンを見る。
ゼンは、一瞬目を見開くものの、白雪の顔を思い浮かべ、決意を持ってイザナを見据えた。
「結構!
何かを打破するために行動するのは
あの娘の得意とするところです」
「・・・それは面倒だ」
イザナは合わせていた剣を離した。
「さて
もう戻るぞ」
「ーー兄上!!
俺は白雪との出会いを
自分が真に辿りたいと思う道の
妨げになどしません」
去るイザナの背に向けて言うゼン。
イザナは振り返ることなく
「では
置いてゆけ」
と言葉を残した。
ぷはぁ!
はぁ・・・はぁ・・・
イザナを前に本心をぶつけたゼン。
それは、とても勇気のいることで、乱れた呼吸を整えた。
「ーーー・・・誰が!」