第9章 ラジ王子の訪城
沈黙。
皆がイザナ・ゼン・ラジに注目していた。
「ラジどの?」
イザナがそう呼びかけると
「はっ!
あ、あぁ」
気を取り戻し、イザナを見るラジ。
「・・・せっかくだが、イザナどの
遠慮させてもらう
私は 白雪どのに去られたわけでは断じてなく
違う地に生きてみたいと
国を出た彼女を
快く送り出したのだからな
まさか未練など!」
演説するようにペラペラと述べるラジに
(この男・・・)
とゼンは白い目で見た。
イザナもそのラジの様子を見て
(・・・ラジがあの娘を欲しがれば
手っ取り早く
ゼンが手を出せない
他国にいつでもやれると思ったが
なぜここまで言って
話に乗ってこない・・・?)
考えた末、
「なにか会えない理由でも?」
と聞くと、ギクッ!!と全身で肯定するラジ。
「・・・・・・
い いや・・・」
ラジの脳裏には、毒を盛った際にゼンに言われた言葉が過ぎっていた。
「白雪どのは・・・」