第8章 甘い一夜 ※
「ん・・・」
あかねはぬくもりを感じながら目を開けると、目の前に胸板が合った。
「起きたかい?」
頭の上から声が聞こえ、その方を見ると、オビが愛しそうに頭を撫でてくれた。
「ん・・・起きた・・・おはよ・・・」
「おはよ、あかね嬢」
オビはいつも通りニコッと笑った。
「昨日、ごめんね、急に来て・・・」
あかねはオビにそう言うと、オビはあかねをギュッと抱きしめた。
「!?」
「あかね嬢、昨日のこと覚えてます?」
オビにそう言われ、あかねは昨日のことを鮮明に思い出し、耳まで赤くした。
「・・・その様子だと、覚えているようですね?」
「忘れるわけないでしょ・・・」
そう言いながら、オビの胸に顔を埋めるあかね。
「それは良かった」
そう言うと、オビはゆっくりとあかねを離し、起き上がった。
「オビ?」
あかねもゆっくり起き上がると
「あかね嬢。
俺はね、今まで同じところに留まることはなかったんですよ。
自分のことに執着もなかったしさ。
でも今
主の元にいて、ミツヒデの旦那と木々嬢がいて、お嬢さんがいて、そしてあかね嬢がいて。
今のこの感じが心地よい気もしてるんですよ。
・・・あかね嬢のこと、大事にしたいと、思ってるよ」
オビがそんなことを思っているとは、そしてあかねに伝えてくるとは思っていなかった。
ふわっと、なんとも言えない関係になると思っていたが、オビはあかねが大事だと言ってくれたことに、あかねは目を丸くした。
「・・・なんか言ってくださいよ」
オビは困ったように笑いながら、あかねを見つめた。
「・・・わたしも。
ゼンがいて、ミツヒデと木々、白雪がいて、オビがいて。
オビ、あなたが大切よ。」
「・・・嬉しいもんですね。」
オビはははっと笑いながら、ベッドから出たため、あかねも近くにあった服を手繰り寄せ、身支度を整えた。