第7章 第一王子の帰還
バルコニーで外を見るゼンの元に、ミツヒデが近づき、バルコニーに背を預けた。
「・・・何だよ」
ゼンはミツヒデの気配は感じていたが、視線は変えずに言った。
「いや、べつに」
2人がそう言葉を交わすところに、興味のあるオビがバルコニーへ行こうとするが、木々がオビの服を掴んで止めた。
「イザナ様
白雪呼んでどうしたんだろうな・・・」
ミツヒデのそのつぶやきに、ゼンは答えなかった。
ガチャ・・・
ゼン以外の3人が扉の方を見ると、あかねが入ってきた。
「あかね嬢」
ピクッ・・・
ゼンの肩が小さく揺れた。
「今日はごめんね
全然仕事してないや」
あかねはへらっと笑顔を作って言った。
「あかね・・・」
「木々、ごめんね?」
木々が何かを言おうとしたが、あかねは言葉を被せ、木々の顔を見て謝り、そのままゼンの元へ歩みを進めた。
「ゼン」
「なんだ」
ゼンは、視線をあかねに向けることは無い。
「わたしがついていながら、申し訳ございませんでした」
あかねは、そんなゼンの後ろ姿に頭を下げた。
「何があった」
その言葉を言うと、ゼンはようやくあかねの方に目を向けた。
その目には、悔しさと悲しさと怒りが混じっているように感じた。
「今朝早く、イザナ様が部屋に来てくださって、少し話を。
お昼前にイザナ様に呼ばれて、そのままイザナ様の公務を手伝ってたの。
でも、まさか白雪を呼んでいるとは思わなくて・・・
イザナ様は、白雪の立場、というものを気にしている様子だった。」
「・・・クソっ」
「ごめん・・・」
あかねはグッと拳を握り、再び頭を下げた。
「いや、あかねは悪くない
どうせ、兄上にまた思ったように言ったんだろ?」
「まぁ・・・黙ってられないよね
大切な主のことだし?」
「主って・・・誰かさんの言葉が移ったのか」
ゼンは、ようやく表情を少し緩めた。
「いや、俺も精進しなきゃって改めて思ったよ
兄上に認めて貰えるように
お前たち・・・俺を助けてくれるか?」
ゼンはミツヒデ、木々、オビ、そしてあかねの顔を1人1人見た。
「「もちろんです、ゼン殿下」」
4人は声を揃えて言った。