第5章 宮廷薬剤師
その後、執務室でゼンたちと共に(珍しく)仕事をこなしていたあかねだが、
ピッ…
「いたっ!」
「どうした!?」
「あ、ごめん、なんでもない」
「何でもなくないだろ?
どうした…
あー、紙で指を切ったのか
痛いよな」
「うん、痛い
でも大丈夫」
「…書類に血がついても困るから
白雪のところに行ってきたら?」
木々がそう言うと、ゼンがピクっとかすかに動いた。
「えー
大したことないよ
こんなんで白雪のところに行っても
迷惑だろうし」
「・・・・・・」
「な、なに?ゼン」
ゼンがあかねのことをじっと見て来ていることに気づいたあかね。
「いってこい。」
「は?」
「だから、白雪のところに行ってこい!」
「な、なんでよ、こんなの大したことないじゃない!!」
「白雪のところにいって、その…」
「?
なに、ゼン、どうかしたの?」
「あかね・・・」
木々はゼンの様子からハッと気づき、あかねに耳打ちした。
コソッ・・・
「白雪のところにいって、リュウのことを見て来て欲しいんだよ、きっと」
「え、リュウ!?」
あかねがバッとゼンの方を見ると、顔を赤くしてそっぽ向いた。
「なるほどね・・・
じゃあ、ちょっと行ってきますね!」
「気をつけて」
「・・・なんだ?
リュウがどうかしたのか?」
よく分かっていないミツヒデと木々に見送られ、あかねは薬室へ向かった。