第5章 宮廷薬剤師
ガヤガヤー・・・
城下はいつも通り賑わっていた。
「あかね嬢、城の外ではいつも髪を隠してるんですかい?」
あかねはフードを被り、人前では俯きながら歩いており、気になったオビはあかねに尋ねた。
「昔から城にいるって言ったでしょ?
昔は人前に出ることもあったから、顔がバレてる。
ゼン達と一緒の時は気にしないんだけどね」
「ふーん…」
オビはそういうあかねの手を握り
「!?ちょ・・・」
「こうしていれば、デートにしか見えませんよ!
下ばかり向いてたらつまらないですって」
「あなた・・・」
オビを見上げると共に、あかねは久しぶりに城下の街並みを、人々と同じ目線で見た。
「すごいね…」
「そうでしょう?
これから、城下を歩きたくなったら、俺が一緒に来ますから」
「・・・うん」
そう言いながら、オビはあかねの手を引き、2人で屋台のご飯を食べたり、アクセサリーや食器など、いろいろなお店を見て回った。
夕方ー・・・
2人は城に戻り、部屋の前の木に座った。
「いやー、楽しかったですね」
「そうねー…
んー!!」
あかねは伸びをしながら、夕日を見た。
「きれいね…」
「そうですねぇ…
あ!・・・あかね嬢の名前の由来って、もしかしてこの夕日ですかい?」
「そうよ
この茜色の空の日に産まれたんだって」
「なるほど…綺麗ですねぇ」
2人は沈みゆく太陽を見ながら、特に何を話すわけでもなく、一緒にいた。
そして、暗くなり始めた頃
「さ、そろそろ夜ご飯の時間よ
1日仕事サボっちゃったし、早く行きましょう」
「俺を監視してたんですから、サボりじゃないですけどね」
「まぁ…そうだけど。」
あかねは立ち上がり、オビの部屋のベランダへ移った。
「ほら、早く行くよ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・オビ」
「はいよ…って、え!?
あかね嬢、今、名前…」
「う、うるさい!!
早くして!!」
あかねはオビの言葉に振り返ることなく歩き出し、2人は部屋を出た。