第2章 infinite loop
「サクヤさん、食欲はあるっすか?」
目の前に出されたお粥に視線を向ける。
真っ白いお米にふわふわとした卵がメインの定番、
卵粥だ。
熱々の湯気と共に食欲をそそる良い匂いが
俺の鼻孔をくすぐる。
久しぶりだ。卵粥なんて……
そーいや……俺が風邪引いたときとか
よく兄貴に作って貰ってたな
懐かしい記憶が蘇る。
出されたお粥をずっと見ていたからか、卵粥は嫌いかとセトが気まずそうに聞く。
『……いや、大好きだ。……ただ、懐かしくてな』
「そーなんすね……あ、熱いから……ふーふー……はい、どうぞっす」
………………は?
いや、こいつ今何やった?
てか、この状況はなんだ
セトが蓮華ですくったお粥に息を吹き、お粥を冷ました。
まだ、100っ歩譲ってこれは許せる。
だが、問題はこの後だ。
これは俗に言うあ~んってやつじゃないのか。
セトの顔と差し出された一口分のお粥を交互に見る。
セトの顔は爽やかな笑顔で
早く食べろと言わんばかりに持っている蓮華を口元に運ぶ。
その威圧に負け
俺は仕方なく最初の一口、お粥を食べた。
____
『……ご馳走様』
最後の一口を食べ終わると、セトがトレーをテーブルに置いた。
最後の最後までセトに無理矢理食べさせられたからか
ちゃんと味わって食べることが出来なかったが、とても美味しかったと思う。
俺とは違い、どこか上機嫌で口ずさみながら
俺の頭を撫でるセトを見ると不思議そうな顔でこちらを見るセトと目が合った。
「どーしたんすか?」
どーした……か。
たまに……思うときがある。
なんで、俺だけがこのループを忘れられずにいるのか。
なんで、皆は忘れているのか。
どんなに足掻いても……結局はアイツに全てを奪われてしまう。
色んな手を使い防ごうとしても、最後には俺を嘲笑い
簡単に繰り返してしまう。
他に手はないのだろうかと、試行錯誤しても無駄だ。
無意味で終わるだけ。
それは誰よりも理解していることだった。