第1章 夢か夢現か
「…っ?」
「どうした?具合でも悪いのか?」
「…それがっ」
任務帰り。俺とセトとカノの3人でアジトへ戻る途中、前を歩いていたセトが急に立ち止まる。
うつ向きながら、頭を押さえるセトにもしやとセトの正面へ回れば、瞳が真っ赤に色づいていた。
「あれれ?目が真っ赤だよ…能力暴走しちゃってる?」
「…はいっす…なんでだろ…コントロールができないっ」
焦るセトにカノは落ち着くように宥め、俺は自身の目に力をいれ能力を発動し俺達を周囲から隠した。
幸いここは人通りも少ない路地裏。俺達が消えても見られて驚かれることはほとんどないだろう。
「声が聞こえるんす…」
「ここを抜ければ大通だけどそれの?」
「いやっ…女の子の声…俺達を知っているみたい…」
「?!っそれはまずいだろ…
セト、詳しく話してくれ」
セトは頷き、俺達の後を指差し
2つ屋根の向こう側にある病院と
息を吐き出すように呟いた。
「あの病院…から」
「っ?!!…ま、まさかゆ、幽霊とかじゃないだろうなっ?!」
「あれれ~?キドってば、もしかして…こわgぶべらっ!!」
ふざけるカノを否定の意味を込めて思いっきり殴り飛ばし、セトの方を見れば苦笑いを浮かべながら首を横に振る。
「…多分、違うような気がするっす…とても切ない気持ちになるんすよ…どうしてだかわからないけど…俺、ちょっとあの病院に行ってみるっす!」
「ちょ、…セト?!」
病院を見つめるセトは何かを決意したような眼差しで俺とカノを見る。
早口に捲し立てるように話すと、
セトはカノの呼び声にも応えず病院へと
走り出す。
「…俺達も行ってみるか」
「…ま、なんか面白そうな事が起きそうだしね~」
数歩遅れて俺達はセトの後を追いかけた。