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古の過去と遠い記憶 (カゲプロ)

第2章 infinite loop



…まずい。肩に置かれた手は逃がさないとでもいうようにがっしりと力が入っている。
冷や汗が頬を伝う…。どう切り抜けるか…そう頭をフルに活動させ逃げ道を探していると店の奥から先輩らしき人が出てきてセトを呼ぶ。

その一瞬の隙を見てその場から逃げ去る俺を、“臆病者”と揶揄する誰かの声が聞こえた気がした。












___

先程購入した鉢植えを両手に抱え、電車で兄貴が眠る場所へと向かう。
まだ昼前ということもあり墓参りに来てる人はちらほら。
そのまままっすぐ歩いて、最後の列にひっそりと墓石が建っている。

『兄貴…遅くなってごめん。ほら…今年はまだ残ってたから持ってきたよ』


そっと水をためた植木鉢を左に置く。
紫色の花びらがそよそよと風に吹かれカキツバタの香りが鼻腔を擽る。
懐かしい記憶が頭を過ぎる。
兄貴との楽しい日々を…俺が…普通の女として生きていた日々を…兄貴が俺のせいで居なくなったのを…俺が女を捨てた日を。



兄貴…なんで、俺を助けたんだ。




その日も兄貴と出かけて帰宅途中、寄り道したんだ。
石段を上がりその先にある鳥居をくぐり神社に参拝をする。
来年は兄貴が受験で…少し早いような気がするけど合格祈願しに有名な神社に足を踏み入れたんだ。

その戻り道に俺の人生が狂うなんて…その時は思いもしなかったんだ。



『きゃっ…』

一瞬の出来事だった。
誰かに背中を強く押され…重力に従い体が落下する。
兄貴が私を呼ぶ声、兄貴が私の体を抱き寄せ私を庇う
全てがスローモーションのように少しずつ見えてくる。
脳裏には今まで楽しいこと、辛いこと…今までの記憶が頭を過ぎる。嗚呼、これが走馬灯なのだとぼーっとした頭で思ってると視界に黒くて大きい…蛇のような物体が大きい口を開けて私達を呑み込もうとしてるのが見えたんだ。


目が覚めたとき通行人が俺を心配してくれた。
どうやら、気を失っていたようだ。

一緒にいた兄貴の事を聞くと“見てない。君、1人だったよ”
そう困った顔で言う。
そんなはずはないと、お兄ちゃんはそんなことしない…一緒にいたと問い詰めてもただ、ただ…困った顔をされるばかり。

これ以上問い詰めては迷惑だ。
そう思い、通行人にお礼を言いその場から離れる。
その周辺、兄貴が行きそうな所
色んな場所を探したが結局兄貴が見つかる事はなかった。
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