第2章 infinite loop
∞再会そして拒絶
朝だ……あの突飛な出来事がまるで嘘のように平穏な一日が始まった。
あの後、まっすぐ帰路につき何事もなかったように一日を終えた。
テレビをつければ、昨日の出来事をマスコミが大袈裟に騒いでいる。
チャンネルを変えてもどの番組も同じ内容ばかりだ。
テレビを消しカレンダーを見る。…そうだ今日は兄貴の命日だ。
カレンダーには黒字で命日と一言書かれており、何も用意してないことに気付く。
洗面所に向かい洗顔と歯磨きを済ませ、引き出しから替えの服に着替えると花屋に向かうべく家を出るのだった。
『確か…花屋はここらへんに…あ、あった』
記憶を頼りに普段通らない道を歩く。
狭い路地裏を抜け商店街へと向かうと洒落たお店が見えてきた。
命日には必ず花を買うって決めてるんだ。
俺が花が好きというのもあるが…兄貴との思い出の花は供えてやりたいんだよ。
「いらっしゃいませっす!」
フードを深くかぶり店内へ入ると、語尾に~っすなんてへんな口調の店員が軽快に挨拶する。
周りを見ると客は俺しか居ないようで…暇のようだ。
気にせず目当ての花を探してるとしばらくしない内に話しかけてきた。
「何か探してるんすか?」
『あ…えーと、カキツバタってある?』
「カキツバタ…?もしかして毎年来てくれてるお客さんっすか?」
今日先輩が言ってたんすよ~…用意するんで少し待ってくださいっす。
そういうとスタッフルームに入っていった青年。
しばらくして鉢植えを持って戻ってきた。
「今年はこの一本しか残ってなくて…」
すみません…と申し訳なさそうに謝る青年から鉢植えを受け取る。
それも仕方ないのだろう。
カキツバタは本来5月から6月に咲く花で8月なんて季節外れだ。
それを毎年無理にお願いして入手出来るだけ有難い事なのだ。
会計を済ませ青年に礼を言うべく振り向くと、それに合わせるかのように強風が吹く。
フードが脱げ閉じた目蓋を空けると、驚愕した青年…もとい昨日見た緑色と目が合う。
「き、昨日の…デパートにいた人っすよね!?確か…名前は…」
『…っ』
これ以上深く関わらない方が良い…そう頭の隅で危険信号が鳴り響く。
静に後ずさりをする。まだ気付いてない様子。
そのまま考え込む緑色に気付かれないよう後ろを振り向くと同時に肩に重みが増した。
「どこにいくんすか?サクヤさん」