第43章 Requiem 場地
中学2年。
俺がまだ留年してなくてほんとにちゃんとした2年生のとき。
「そーだ!ラン!
最近ペヤングの蓋にキャベツが付かねぇ方法思いついたんだよ!」
「えっ?なにそれ?教えてよ!」
俺とランはよくうちでペヤングを食べることがあった。
とくに深い意味はない。
ただ俺がペヤングが好きなだけで、そしたらいつのまにかランもペヤング好きになっていた。
「こーして一旦麺をとって、麺の下にかやく入れてお湯かけんだよ。すげー頭良くね?俺!」
「へーっ!なるほどっ!
さっすがペヤング男!!!」
ペヤング男!
褒められた!!
そうしていつもの如く、
ペヤングを半分こにして食べた。
「あっ、猫ちゃんだ!
最近この猫よくここ来るよねぇ。」
「そーそー。下の階からよく来てるみてぇでよ。
どこんちの猫なんだろーな。」
ランがその黒猫を抱いている様はやっぱ何者にも変え難い癒しだ。
あー…やっぱこいつのこと、好きだ。
ペットにしてぇとかじゃなくて、
いや、それもいいけど…
単純に、ずっとこの先も一緒にいたいって思う。
初めて会った時とは似ても似つかないくらい
コロコロ変わるこいつの表情や言動に翻弄されていく。
俺の心のど真ん中はもう
完全にランが占領している。
こいつは俺の心をこれだけ奪っておいて
きっとこれからも動かし続けるんだろう。
だからって俺は、三ツ谷に心を奪われてるこいつの心を、どうこうして奪ってやろうとか思わない。
ただ、だんだん生きやすそうになっていくランの、もっともっと幸せそうな顔を見られればそれだけでいい。
こうしてこの先も、
近くで見ていられれば。