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progress ~東リべ卍~R18~

第43章 Requiem 場地




「………。」


また手を取ってもらえないと思っていた。
でもこの時ランは、初めて俺の手を取ってくれた。

俺のこれが、同情じゃないと分かったからかもしれない。

ランはそっと俺の手を掴んで歩き出した。

そのときの嬉しさといったら忘れられない。

どことなく照れているかのような不機嫌な顔も。
柔らかくてひんやりした感じの手の心地良さも。



「ラン、痛てぇよな?
早く帰って手当しねぇと。」


「…っあ!猫ちゃんっ」


猫はヒョイッとランの腕から抜けると、お礼を言うかのように1度振り向いてから駆けて行ってしまった。

ランは寂しげな顔をして猫を目で追っている。



「まぁ怪我もねぇし、大丈夫だろ。
それにしてもお前最高な奴だな!」


ニッと笑って俺はしゃがみ込んだ。


「ほら、おぶってくよ。
脚とか擦りむいてて痛てぇだろ?」


「いっ、いいよっ、こんなん痛くないし」


「いーから乗れって。」


半ば強引だったけど、
ランは俺に身を預けてくれた。


……かる…。
女の子ってみんなこんな軽いもんなのか?

女の子をおぶるなんて初めてだ。
なんだか少し照れるな…


「お前さ…今後あーゆーことあっても、無闇矢鱈に突っ込んでくなよ」


「………」


「お前になんかあったら俺はマイキーにも真一郎くんにも会わせる顔がなくなるよ」


「………」


「身を呈して動物助けるランはもちろんカッコよかったけどさ、自分のことは大事にしろよ。
怪我…させちまって悪かったな」


「…圭介」


思わずピタリと足を止めてしまった。

初めて…こいつから名前を呼ばれた。
ランの声で初めて俺の名前を聞いた。
しかも下の名前だ。
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