第40章 retrieve*
2人はひとまず試着してみた。
「すごいっ!隆似合ってるよ!
良かった〜不安だったけどなんとか失敗せず完成させれて」
「ランも似合ってるよ。
やっぱ俺の作ったもん着てるランが、一番可愛いかも。」
その言葉に、なんとなく顔が熱くなる。
けれど初めて三ツ谷の気持ちがわかった気がした。
確かに、好きな人が自分の作ったものを着ているのはなんとも言えない嬉しさがある。
「これからの季節にピッタリだし、
毎日着るよ。」
「うん、俺も。
それにしてもこんな物まで作れるようになったなんて、ランもかなり腕上がったな。驚いたわ」
「へへ…部長に褒められるなんて光栄だね」
そう言った瞬間、ハッと思い出してしまった。
「そういえば隆!ホストやってたんだって?」
「はあ?」
「安田さんが言ってたよ!
ホストで女子部員たちを釣ったんでしょ?」
「なっ?!妙な言い方すんなよ」
安田さんめ…余計なことを…
てか………
ランめちゃくちゃ不貞腐れてんじゃんか!
「あー… ラン?あのさ…」
「ずるい」
「えっ」
「ホストの隆に接客されるなんて…」
「え、なんでだよ。
別にそんなのたいしたことじゃ」
「私の知らない隆を誰かが知ってるのって…
なんかすごく……ヤダ…」
「っ、ラン…」
口をへの字にして
少し顔を赤らめ視線を落としているランが、どうしようもなく可愛く見えて胸がキュンと締め付けられてしまった。