第39章 respective
絶望感でいっぱいになりながら帰宅すると、なんと自分の部屋には安田さんがいた。
万次郎が入れてくれていたらしい。
相変わらずの万次郎の勝手さでも、こういう勝手さは頼りになる。
一応しっかり、お茶とどら焼きまで出している。
あとでお礼言っとかなくちゃ…。
「遅かったねランちゃん。
何してたの?一応ここまでは少し形を抜いて置いたけど、」
「ごめんね安田さん…どうしよう……
せっかくだけどもうそれ……渡せないかも…」
「え?…ちょっ、ちょっと大丈夫?!」
グズグズと泣き始めるランに
安田さんは心底驚いている。
「何があったの?!」
「隆に嫌われちゃった…」
「はい?!?!?!」
その後にした説明を、
安田さんは黙って聞いてくれた。
「そっか…なるほど…。
意外だなぁ。部長って、やっぱりランちゃんの前だと余裕なくなるんだね。
いつもは周りより大人びてて冷静なのに、そうやって感情剥き出しにすることもあるんだぁ。」
ランはもうどうしていいか本気で分からなくなっていた。
謝るにも、全部言い訳に聞こえそうだし、
そもそも自分の軽率な行いを心底恥じた。
あの人のせいでもないし、全部私のせい。
「でも大丈夫だよ、ランちゃん。
部長は結局なんだかんだ言ってもランちゃんが大好きなんだから、心配することないって。
きっと今頃すごく罪悪感感じてるんじゃないかなぁ。」
「そんなっ…隆は何も悪くないよ!
罪悪感なんて感じる必要ないのに」
「でも部長ってそういう人だもん。
とにかくもう一度会って話せば分かり合えるよ。
ほら、気を取り直して作業再開しよ!」
安田さんはランを精一杯前向きにしようとたくさん励ましてくれた。