第39章 respective
「手加減したつもりだったんだけど…大丈夫か?」
今牛が苦笑いを浮かべて若干焦ったように三ツ谷たちに手を差し伸べた。
しかしその瞬間、
俯いていた三ツ谷が顔を上げギロリと鋭い眼光を突き刺し、今牛に殴りかかった。
「おお…っ…ハハッ、いいね。
骨はあるよ」
「手加減なんかしてんじゃねぇよ」
「俺がヤル気だったらお前、今立ってねぇよ」
その言葉に思わず鳥肌が立った。
ドガッ
パシッ
「2人とも待っ」
ランは急いで二人の間に割って入ろうとした。
その時…
「おいワカ!」
突然の怒鳴り声に
全員ピタリと動きを止めた。
「何やってんだてめぇ。」
「あ、武臣」
武臣と呼ばれたその男は、長身で長髪オールバックのこれまたなんとも柄の悪そうな男だった。
またヤバそうなのが増えたと思い、ランは急いで身構える。
「んー?おいよく見りゃ中坊じゃねぇかよ。
ガキ相手に何やってんだてめぇはよ」
「いや、最近の中坊の喧嘩の腕
どんなかなーってさハハハ」
「やめとけよ、くだらねぇ
馬鹿やってねぇで帰んぞ」
「それよりちょっと聞いてよ武臣」
今牛は武臣の耳にコソコソと何かを話し出した。
「なっ?ホントか…?
…あの頃とぜんっぜんちげーじゃねぇかよ」
武臣は目を見開いてランを凝視した。
「ま、とりあえずさ、そんな甘っちょろい感じじゃ大事な彼女のこと守れねぇよ?」
今牛は三ツ谷に対し見下したように笑った。
「出直してきな。いつでも買ってやるよ。」
「おいワカ、バカ言ってねぇで行くぞ」
「じゃあなランちゃん!
またね!ばいばーい♡」
今牛は満面の笑みで武臣に引きづられて行ってしまった。