第39章 respective
「おいてめぇ、タカちゃんに喧嘩売ってんのかよ」
「え?いや売ってないけど。
そっかぁーこの子がランちゃんの」
「気安く名前呼んでんじゃねーよ」
ランはハッと我に返る。
なんか…もしかして隆…
勘違いしてる……?
「あっ、違うよ隆!
この人は別になんでもなくって」
「はぁ?じゃーなんでデートしてんの?」
「でっ、デート?!」
確かに…2人きりでこんなカフェでスイーツ食べてお喋りしていたら、これはもうデート以外の何者でもないかもしれないと思ってしまった。
「ご、ごめん…そのつもりじゃなかったんだけどたまたまその」
「昨日この子が痴漢に遭ってたから俺が助けてやったの。なんか文句あるー?」
今牛が溜息混じりにそう言って立ち上がり伝票を掴んだ。
「…え?どういうことだよラン。」
「え、あ…えっと」
「やれやれ最近の中学生って血の気が多いんだね。
まるで昔の俺のよう(笑)
じゃあまたね、ランちゃん。
俺の言ったアレ、絶対やれよ!いいな?」
「あ?アレ?」
三ツ谷はその秘密の会話にみるみる険しい顔をする。
そこで八戒が今牛の腕を掴んだ。
「待てよオッサン」
「あん?オッサンじゃねぇんだけど…何?」
「お前ぜってータカちゃんに喧嘩売ってんだろ。
人の女に手ぇ出しておいてノコノコ帰んなよ。
俺がその喧嘩、買ってやる。」
真剣に睨み下ろす八戒に、
今牛は目を逸らさず暫し沈黙したかと思えばクスクス愉しげに笑いだした。
「いーよ、分かった。
会計してくっからさ…」
そこまで言って、
突然ガラリと目の色を変え、カッと見開いた。
「オモテ出て待ってろ」
その一言は、とてつもなく恐ろしい迫力のある低い声色だった。