第36章 regain
三ツ谷は部室でカタカタとミシンを使いながら、一向にランが来ないことを疑問に思っていた。
「あいつ…何やってんだろ…大丈夫かな?
今から行くってメールきてからもう随分たったぞ…」
「部長〜何作ってるんですかー?
綺麗な色〜パープルいいですね。」
部員の安田さんが、三ツ谷の手元を見て話しかけてきた。
「あー、ちょっとカーディガンを。
春に着られるような」
「あぁランちゃんにですね」
「っ、なんで分かんだよ…」
「分かりますよそんくらい。
紫はランちゃんの好きな色でもあるし。
ところで今日バレンタインなのにランちゃん来ないんですかー?」
いや、そうなんだけどさ……
あれからランとは会ってなくて
いろんな意味で不安だったけど、
今日は会おうってランから言ってきた。
夜の集会の前に俺と会おうとしてるってことは…
まぁそういう期待をしてもいいのかななんて思ってたけど…
もしかして今日という日だからこそ
結構忙しいとか…?
あげる人がたくさんいて……
「なんか来るとか言ってて来ねーんだよ。
電話してみようかな」
「した方がいーですよそれ。
あの子が部長以外の用事優先するとかありえないんで」
はは…と苦笑いしながら電話をかけ始める。
「………。」
出ない…
え、なんで?
なんだか無性に嫌な予感がした。
ピッ
一旦電話を切って眉を顰める。
…いや、迷ってる暇があったら行け!
またあん時みてぇなことになってたら…
携帯をポケットに入れガタンっと立ち上がった瞬間、携帯が鳴った。
よかった!!折り返し来た!
心底安堵しながら携帯を取り出すと、
表示されているのはランの名前ではなく、
タケミチだった。