第36章 regain
一方その頃…
三ツ谷は部室に行く途中で下級生数人に呼び止められた。
「せ、先輩!良かったらこれっ!どうぞっ!」
あー…そうだよな…
今日バレンタインだもんな…。
「ありがとう」
にっこり笑って受け取ると、女子たちはホッとしたように顔を赤らめた。
やべ〜…タメの奴らにも貰ったし、
もうカバンに入り切らねぇんだけど…
すると、また別の女子に声をかけられた。
「三ツ谷先輩!あのっ…これ…どうぞ!」
「えっ、あ…ありがとな」
「それと…あのぅ……」
「ん?どうした?」
「…私っ…ずっと三ツ谷先輩のこと…す、好きでっ…つ、つ、付き合ってくれませんか?お試しでもいいんです!」
「えぇっっ?!」
見るからに可愛らしいモテそうな女子だ。
相当勇気を出したであろう彼女はチラチラ上目遣いで見ながら顔を火照らせている。
三ツ谷は眉を下げながら頭をかいた。
後ろの方でこの子の友達なのか、数人がこちらの様子を見守っているのが分かった。
「…えっと、その…ごめんな。
俺、彼女いるんだ」
一気に傷ついたような表情になるこの子に罪悪感が込み上げる。
しかし、正直に言うしかないし傷つけない方法なんてないと思うので言うしかない。
「そ…そうですか…」
「でも嬉しいよ。勇気出してくれてありがとな。
これ、大事に食うから!」
彼女はパッと顔を上げ、目を丸くした。
「あとさ、お試しでもとか言うなよな。
自分のこと、もっと大事にしろよ?な。」
そう言ってにっこり笑って行ってしまった三ツ谷を、彼女は茫然と見つめ立ち尽くしていた。
後ろから友人たちが慌てて声をかけてくる。
「ちょっとレナ!大丈夫?!」
「こんな可愛い子振るなんてひどいね」
「さすが不良。イケメンだからって調子乗ってない?」
「三ツ谷先輩……やっぱりカッコイイ…
決めた!私めげない!!!」
「「「え。」」」