第34章 ratio*
「触っていいよ…万次郎。」
万次郎のその手を握って頭に置いた。
戸惑うように、クシャ、と髪が撫でられる。
懐かしい感じがした。
これ…
小さい頃はよく勢いよく跳ね除けてた。
拒否らなくなったのは…
一体いつからだっけ?
もう忘れてしまった。
そのくらい、
ずっと長いこと万次郎といるのだと実感した。
「……もう、怖くない?」
こくりと頷くと、万次郎は安心したような柔らかい笑みを浮かべた。
「俺ね、ずっと長いこと、
多分ランに、ちゃんと振ってほしかったんだと思う。俺のもんにはぜってーならねぇって心のどこかで分かってたんだ。」
「…っ…」
「そんな自分を無視してた。
でも…強くなりたかったんだ…」
"本当に大切なことは、喧嘩に勝つことじゃねえ。
自分に、負けないことだ。"
その言葉がまた脳内にリフレインして
ドクッと鼓動が跳ねた感覚がした。