第34章 ratio*
「ラン…ありがと。
俺さ…一番最初に好きになった奴がランで、良かったって思ってる」
「まんじろっ…」
「何年も何年も、今までずーっと、
ランの1番近くで笑ったり落ち込んだりできた。
いろんなランを見てこれた。
…すっげえ幸せだった……」
どこか遠い目をして優しく弧を描く万次郎の瞳が綺麗で、目が離せなくなった。
「…羨ましいだろ?
俺は今も、超幸せなんだ。
好きな奴が、俺のことを命より大事って言ってくれてんだぜ?」
これ以上の幸せある?
そう言って、万次郎は笑った。
その笑顔が、
どこか泣いているように見えて…
また目頭が熱くなって奥歯を噛み締めて耐えた。
万次郎…
自分が振られて辛い状況のはずなのに…
私がいつのまにか慰められてる…
その優しさに甘えてしまう私は…
本当に愚かな気がする。
隆といい万次郎といい、
どうしてみんなこんなに優しいんだろう。
「たくさん傷つけて…ごめん」
「ふはっ…なんだよそれ!
俺のセリフなんだけど!」
万次郎はケラケラ笑ってランの頭に手を置こうとした。
しかしその手は宙をさまよって止まった。
…ほら、優しい。