第34章 ratio*
「結婚して。ラン。
将来俺の、嫁さんになって。」
音が無くなり、息すら出来なくなった。
周りの何もかもが見えなくなった気がした。
ただ目の前の人の、
優しげな顔しか……
硬直したまま動けないでいると
パッと口が解放された。
「返事、聞かせてよ。」
自分の呼吸を思い出したかのように
開いた口から一気に酸素を吸い上げる。
「はい…」
たった一言、それしか発せられなかった。
それでも三ツ谷の瞳が優しく細まっていく。
口元は、嬉しそうに弧を描いていった。
「やっとこれで…」
三ツ谷に勢いよく抱き締められる。
「ずっと、俺のもの…」
耳元で囁かれた微かな声と吐息に目を瞑る。
幸せだと思った。
心から。
幸福な未来以外が全く想像つかなくなった。
「隆…ありがとう。」
ふっと三ツ谷が耳元で笑った。
そのままゆっくりと押し倒され、三ツ谷の笑みが目と鼻の先にある。
「じゃあご褒美は…もらっとく。」
唇が重ねられた。
離れては重なり、何度も角度を変えて触れるようなキスが落とされた。
それが徐々に
互いを貪るようなものへと変わっていった。