第34章 ratio*
眉間に皺を刻んだまま
徐々に三ツ谷の空気が変わっていった。
「別れる……って、
俺が言ったら別れんの。」
数秒の沈黙の後、
少し怒りを込めたような声色。
「…それは……うん。
仕方ないことだから……」
だって…私は
隆をすごく傷つけた。
「私…あの時助けてくれた隆に嫉妬してたんだと思う。
男で、強くて、女を守れた、そんな隆に…」
私はやっぱりどうしても男にはなれないから…
男に女扱いされる、男に襲われる対象の女…だから…
「隆のことも万次郎のことも、男として怖いって初めて思っちゃった。そんな私が許せなくて…軽蔑するでしょ。
2人はそんな男じゃないって分かってるのに…」
「いや俺もマイキーも、そんな男だよ。」
その言葉に、ドクッと鼓動が跳ねた。
「俺もマイキーも…
お前が怖がってる男とそう変わんねぇよ。
だって男なんだから。」
三ツ谷の瞳は、玲瓏な光がぎらついていて
目が離せなくなって吸い込まれそうになる。
何度も見てきたその目に、顔に、
やっぱり男であり異性なのだと再認識させられた。
そして
自分がちゃんと女なのだということも…。
「俺は… ランが好きだよ。
別れたいなんて思うわけ…ねぇじゃん…」
見開いているランの目から涙が溢れてきた。
その頬に、目を細めた三ツ谷がそっと手を差し伸べる。
しかしやはりその手は
触れるのを躊躇うように止まった。
「……俺のこと怖い?」
眉をひそめて問いかけてくる三ツ谷の優しさに
ポロ…と頬に涙が伝う。
声が喉の奥に詰まって出てこない。
代わりにフルフルと首を振った。