第34章 ratio*
三ツ谷は、突然自分の家に押しかけてきて
頭を下げるランに困惑していた。
「頭を上げろってラン!
とりあえず中入れよ」
急いで腕を引き
自分の部屋へと招き入れる。
「ほら飲め」
ランの好きなカルピスをむちゃくちゃ濃いめに入れて差し出した。
それをおずおずと受け取り、ストローでチュー…と静かに吸っているランに思わず頬が緩んでしまった。
俺だったらぜってーむせるんだけどな…
こんなところも
マイキーに似ていて複雑な気持ちになる。
「…つぅかラン、
なんかついてるよ?」
三ツ谷はランの口端に手を伸ばし、それを拭った。
「…ん?なんだこれ?」
「あっ…ど、どら…」
「どら?」
「………」
「???」
「そ、それよりホントに…ごめんね…」
「だから別に俺、怒ってないって。」
ランはずっと目を合わせず
悲しそうな表情をしている。
「私、隆にも万次郎にも、未来では笑っていてほしいの。」
「…うん。
俺も、お前らにはずっと仲良く笑っててほしいよ…」
そう呟くように言って切なく笑う三ツ谷に、
ランは真剣に向き直った。
「私は…隆と別れたくない。
勝手なこと言っていっぱい傷つけたのわかってる。
だからやり直してほしいとは言わないから…
だからせめて…前みたいに笑い合える関係に戻りたい…」
目を見開いてから眉間に皺を寄せる三ツ谷から
目を逸らしそうになる。
けれど、自分には負けたくない。
好きで大切だという気持ちはちゃんと伝えたい。
「中途半端な恋愛で傷つけ合って二度と会えない関係になるよりも、いつか笑って会える関係でいたいの…」
だから、ハッキリさせたい。
もう嫌いになってしまってるかもしれないから
だからちゃんと言ってほしい。