第33章 realm
「三ツ谷、お前はさ…
まだランのこと、好きだよな?」
静かに呟くように問いかける万次郎に、
三ツ谷は寂しげな顔で笑う。
「あぁ……」
カランっと氷が溶ける音がやけに大きく響いた。
三ツ谷はグラスを
どこか遠い目でジッと見つめている。
「好きで好きで…どうしようもなく好きで…
好きすぎて……嫌いになりそうだよ…」
掠れた静かなその声に、
万次郎は肘をついて額に手を置き俯いた。
「お前はいいな…」
ポツリと発せられた言葉に
三ツ谷は顔を上げた。
「ランのこと、好きになったり嫌いになったりできて…。あとランも、お前のこと好きになったり嫌いになったり…」
訝しげな表情になる三ツ谷。
しかし万次郎の表情は見えない。
ただだだ、自嘲気味に笑う口元しか見えなかった。
「俺は多分、一生あいつの中では…
男として無色透明のままだ。
好きも嫌いもない。」
目を見開いて何も言えなくなっている三ツ谷に、万次郎が顔を上げ目を細めた。
「でも…好きな奴にはずっと笑っててほしいって思う。死ぬまで一生。俺はあいつのこともお前のことも、大好きだから…」