• テキストサイズ

progress ~東リべ卍~R18~

第33章 realm



店を出て、裏路地に回り、
三ツ谷の拳が何度も万次郎の頬に当たる。


「おい、なんでやり返してこねぇんだよ!」


「ふっ…だって…面白ぇんだもん。
こんな余裕無くしてる三ツ谷、なかなか見れないぜ?」


挑発するように見あげてくる、傷だらけの万次郎に顔を顰める。



「…てんめぇっ」


バコッ!
ドガッ!



ハァハァと息を切らしながら、
三ツ谷は俯いて拳を下ろした。



「…くっ、そ……」


ポツポツと雨が降ってきた。
三ツ谷の目から、自分の涙か雨の雫か分からない水滴が頬を伝った。


それをボーッと見つめながら、
万次郎がボソリと呟いた。


「……ーよ」


「あ?」


「ウソだよ」


「……」


「ランにもう1回キスしたなんて、ウソ。」


「っ……なんでそんな嘘ついたんだよ」


「殴られたかったから。お前に。」


「あと、お前の余裕なくなったいっぱいいっぱいなとこ、ちょっと見てみたかったんだ」


万次郎は頬を擦りながらその場に座り込んだ。


「…マイキー、だいじょ、」


「お前が感情を表に出すとこ見たかったんだ。
でも悔しかったのも本音。」


「……。」


「お前らの中から、俺が完全にいねぇみてぇで。」


地面を見つめたまま言う万次郎の言葉に、
三ツ谷の鼓動がざわつく。



「あんな愉しげなプリクラ…
しかもオレのもんって…一生大好き…とかさ……」


お前らが余裕すぎて…
とくに三ツ谷が余裕すぎて…
だからあんとき俺のことも殴らねぇほど余裕で、怒ったりする必要もねぇほど余裕で…
殴る価値もねぇほど俺には1ミリも興味なくて…

俺って…なんなんだろう。
お前らにとって。
/ 996ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp