第33章 realm
「ならさ…そのままそう言ったらどうだ。
ランにさ。」
三ツ谷が静かにそう言った。
万次郎の瞳が僅かに揺れる。
「…うん。そうだな…」
「ランだって、マイキーと今のままなんて嫌なはずだ。俺にはわかる。」
「……。」
「ランは昔からお前のこと、すげー大事に思ってる。」
万次郎が苦しげに眉間に皺を寄せた。
三ツ谷は小さくため息を吐く。
「俺だってお前らがいつまでもそんなふうなの、すげぇ嫌だし。…だから早く仲直りしてくれよ。」
「……うん。」
2人同時に静かに飲み物に口をつけた。
グラスを置いて、ふと万次郎が三ツ谷の携帯に視線を落とす。
「…っえ!なにこれ!ちょっと見してっ」
「っあ!バカやめろっ」
「うっわ〜〜……」
「かっ、返せよっ」
万次郎は携帯に貼ってあるプリクラに目を丸くしながら、奪おうとしてくる三ツ谷を器用にかわしている。
「それ……昨日撮ったんだよ。
ランに言われてそこに…貼られて…」
「……。」
万次郎は無言のままジッとそれを眺めている。
キスやハグをしているプリクラ…
"オレのもん"
そう自分が書いた落書き…
三ツ谷は気まずさに耐えきれず、
バッと携帯を奪い去った。
「…へぇ〜…やっぱお前らって…ラブラブだな。
誰も裂けられねぇ仲って感じ。」
「………。」
妙な沈黙が流れた。
「……なぁ三ツ谷…お前はさ…
そんなにあいつのこと愛してんのに、なんで俺がこんなことした事、怒んねぇんだよ」
「……。」
三ツ谷は黙ったまま目を逸らした。