第32章 rear
「…随分と舐めてくれてんね。
言っとくけど私は、万次郎より強いからね」
「よせ、ラン。下がってろ」
「なんで?喧嘩売られたのは私だよ?」
万次郎が止めるも、ランは蘭に近づいていく。
「じゃ、お先にどーぞ。
レディーファーストで♡」
蘭が余裕の表情で突っ立っている。
レディーファースト…
そんな言葉を言われれば、いつものランならば即座に殴り掛かるところだ。
しかし何故か今回は、
手も足も思うように動かせずにいた。
あれ……
なんで……?
なんで私…震えてんの?
まさか…
男に近づくのが…
まだ…
怖いから?
「ん?どーした姫様?
来ねぇならこっちから行くぜ!!!」
バッー…!
と目にも止まらぬ早さで飛んでくる拳に、
ランはハッとなって目を見開いた。
その瞬間…
ズドドドド!!!
「「!!!」」
「ランに近づくなっつったろ」
万次郎の足蹴りが蘭に飛んでいた。
それでも蘭は腹を擦りながら起き上がった。
「おいおい、ハハッ
いきなり出てくんの反則だろ」
「俺は今すんげぇ気ぃ立ってんだよ
マジでなぶり殺しちまうから失せろよ…」
万次郎の氷のように冷たい眼光と
おどろおどろしい空気に、ランは焦り出す。
「はん?兄貴に向かって結構すげぇこと言うじゃん?」
今まで大人しかった竜胆が青筋を立て始めた。
完全にキレている様子だ。