第32章 rear
「こんなところで東マンツートップがデートぉ?」
急いで振り返ると、
そこに立っていたのは灰谷兄弟だった。
「え〜すげぇ久々ぁ〜」
不気味な笑みを浮かべている灰谷蘭の斜め後ろには、モゴモゴと口を動かして大判焼きを頬張っている灰谷竜胆がいた。
話に夢中で全く気配に気が付かなかった。
「っは?なんでこんな所に」
確か今は…
天竺とかいう族にいるって聞いたような…
ランはたちまち好戦的な目になり立ち上がる。
「いやここ、俺らの席だしぃ〜?」
「それ、美味しいよね!ランちゃん!
俺らよくここで食ってんの!」
竜胆はニコニコしながら
ペロリと唇を舐めた。
「あっそ。てか席とかなんなの。
自分たちのもんみたいに。
行こ、万次郎」
立ち上がったランに、
「おいおいおいおいちょい待てよ〜
せっかく会えたんだから〜」
と蘭が呼び止めた。
「1度東マンの姫様とは手合わせしてぇと思ってたんだ〜♡
付き合ってよ♡
竜胆、これ持ってて」
「えー」
蘭はおそらく大判焼きの入っているであろう袋を竜胆に押し付けると、冷徹な笑みを浮かべて指をポキポキと鳴らした。
「なら俺が相手すっから。ランに近づくな」
万次郎が静かに立ち上がった。
「いやマイキー、お前とはちょっとまだ先にしときてぇんだよなぁ。ひよってるわけじゃなくて、最強の女とやってみてぇんだわ」
1歩2歩と近づく蘭に、
いつもは男にならすぐさま攻撃を仕掛けるランがビクッと体を強ばらせたのに万次郎は気づいた。
きっとまだランは…
トラウマになってる。
そんな自分が許せない負けず嫌いのランが、
今ここでやり合ったらどうなるか……