第32章 rear
「嫌いになりたい」
沈黙が流れた。
「……は?」
ランはただ、ポカンとした表情になる。
「お前のせいで、毎日苦しいし、辛い。」
「へ?…え、なになに?どういうこと?」
「お前のせいで、三ツ谷の目、見れなくなった」
「何言ってんの?!」
「お前のこと、ブスだと思いたい。
お前がどこで何してるかとか考えたくない。」
万次郎が手に持つ大判焼きから、
餡子が飛び出て地面に落ちた。
力が入って手が震えている。
「ま、んじろ…?」
「はー…なんでもねぇ。
お前なんか…気は強いし気も短いし強情だし
女らしくないし…
もっといい子なんて他にもいっぱいいるんだからな」
顔を上げて、ランを睨みつけると、
ランはただただ心配そうに顔を歪ませていた。
その表情に目を見開いて唖然とする。
一瞬で万次郎は我に返った。
え…
俺何言っちゃってんの…
超ガキじゃんか。
なんて言っていいのか言葉を探していると、
後ろから声をかけられた。