第32章 rear
万次郎のバイクに乗って帰っていた道すがら、
後ろからランが明るい声を出した。
「ねぇ!万次郎!
大判焼き買ってこーよ!
ほらこないだ言ってたスーパーの隣のさぁ」
「あ〜あれね、いいよ」
その店に到着し、
餡子とクリーム両方を嬉しそうに幾つも購入する2人。
近くのベンチで食べながら、
2人は無邪気な子供に戻ったようだった。
「昔っからうちらってこうだよねぇ〜
夕飯前なのにこうして食べちゃうんだよね!
たまにはどら焼きとかたい焼き以外もいいなぁ〜また来よ〜」
「・・・」
「…万次郎?」
突然万次郎が手を止め黙り込んだので
ランは疑問符を浮かべながら万次郎の顔を覗き込む。
「どーしたの?」
「ランにとってはさ、俺ってやっぱり家族?」
「えっ?
…そりゃあ大事な家族だし、仲間だし、友達だし…」
「…そーだよな」
万次郎は無の表情で手元を見つめたままだ。
「え、なに?いきなりどうしたの?」
「俺、お前のこと……」
いきなりまた口を閉ざしてしまった。
ランは目を丸くする。
「へ?なに?」
「お前のこと…」