第31章 reaction
「ねぇ…2人のどっちか、
私の髪、切ってくれない?
このままじゃ乱雑でおかしいからさ」
涙を引っ込め、真剣な顔でハサミを差し出した。
しかし、三ツ谷は戸惑いながら口を開いた。
「でも…」
「もう、隆がくれたスカーフもしばらくできないしさ…
髪、邪魔なの…」
それでも三ツ谷はハサミを受け取れずにいた。
なんだかとてつもなく、
今の言葉が悲しく聞こえた。
だって…せっかく綺麗な髪なのに…
俺はランの髪も大好きなのに…
俺があげた赤いスカーフも…
すごく似合ってるランだったのに…
どんどん伸びて、女らしくなっていってたのに…
「いーよ、切ってやる。」
そう言ってバッとハサミを受け取ったのは万次郎だった。
ランを座らせると、
万次郎は無の表情で髪を切って行った。
その光景を、三ツ谷はただ呆然と見つめていた。
「…ほら、できた。
さすが俺。上出来じゃね?」
「ありがと、万次郎」
ランの髪は、肩より少し短いショートヘアーになっていた。
万次郎よりも短い。
「うん…ショートも似合ってるな、ラン」
三ツ谷もそう言って悩ましげに微笑んだ。
万次郎も明るく笑っている。
そんな二人を見ていたら、なんだかまた目頭が熱くなった。
「ごめんね、2人とも…ありがとう…
私…ホントはすごく…怖くて…」
なんでだろう。
なんでまた私は震えてるんだろう…
「情けないよね……
こんな私のこと、2人とも誰にも言わないでね?」
「大丈夫。」
そう言って抱き締めたのは三ツ谷だった。
その行動に、万次郎は目を丸くする。
「大丈夫だ。」
「た、かし…」
2人の抱き合う姿を、
万次郎は遠い目をして静かに見つめていた。
俺は今、触れていいのか躊躇したのに…
三ツ谷はなんの戸惑いもなく…
俺だって、
ホントはめちゃめちゃ抱き締めたかった。
でも…
やっぱり…
ランは俺じゃダメなんだな…