第29章 rapture
「大丈夫ですかタケミチくん!!」
「ナオト…?」
別の方向からはナオトが現れた。
そしてナオトはランに銃を突きつけている。
「銃を地面に置け… 月乃ラン」
ランは銃を持ったまま、
無表情で万次郎の姿を見下ろしていた。
気がついたようにタケミチが万次郎を抱き起こした。
「まっ、マイキーくん!!」
「タケミチくん近寄っちゃダメだ!!」
「マイキーくん!!マイキーくん!!」
血を流してぐったりしている万次郎を抱きかかえて必死に呼びかけると、そこにゆっくりとランが近づいて行った。
「動くなっ!」
ナオトがランに銃を突きつけたまま叫ぶが、
ランは近くまで行き、万次郎を見下ろした。
「…… ラン」
「っ!マイキーくん!」
「ラン…来てくれたんだ…
ありがとう。多分タケミっちには…無理だったから…」
ナオトは目を見開いた。
どういうことだ?!
状況が掴めない。
そもそもなぜ月乃ランが佐野を撃ったのかも。
そしてなぜ、月乃ランが一言も言葉を発さないのかも。
全く表情の掴めない雰囲気でただそこにいるだけ。
無機質な空気に紛れていて、おかげで全く気配に気付けなかった。
そして…
自分が佐野万次郎を撃ち抜くより先に、
なぜかこの人が撃ち抜いた。