第29章 rapture
「マイキーくんは変わってねぇ!!
あの頃のまんまだよ!!」
タケミチは泣きながら万次郎の両肩に手を置いた。
「やめろタケミっち…」
「俺、目ェ見てわかるもん!
なんにも変わってねぇよ!!」
「やめろ」
「変わってないよ!
だから…だから…っ!!
消すとかそういうのやめてよ!!」
ガッ!!
「お前はなんだ?」
突然胸ぐらを掴まれ、地面に倒され馬乗りになられたタケミチ。
その頬に銃を押し付ける万次郎の鋭い眼光が、タケミチの真っ直ぐな曇りひとつ無い眼を見下ろす。
「…っ…そんな目でオレを見るな…」
万次郎の目から溢れる涙が、タケミチの頬に落ちた。
それでもタケミチはただ真っ直ぐと、潤んだ瞳で見上げていた。
「銃を拾え、タケミっち。
俺を殺すか、オマエが死ぬかだ。」
沈黙が流れる。
ポタ、ポタ、と流れ落ちてくる雫が冷たかった。
もう何も考えられなくなっていた。
「あの頃は…取り戻せない…」
冷たく、諦めたような言葉でも
どこか悔恨の想いがあるようなその表情。
死を覚悟したようにタケミチが目を瞑った時…
ドンッ!!
「!!!!!」
自分の上から万次郎の体重が消えた。
「え……」
視線を移すと、銃を構えてそこに立っていたのは…
「… ラン…さん…?」
万次郎を撃ち抜いたのは、
紛れもなく、大人になっている月乃ランだった。