第29章 rapture
「最高の奴らだよな。
そんな奴らを…俺は殺した。」
「え?!」
「あの頃の東マンはもういない。
アイツらはみんな…みんな…
オレが殺した。」
「?!」
「だから頼む…
お前が終わらせてくれ」
その言葉に耳を疑った。
一切の音が遮断されたように時が止まった。
思考までも停止する。
「ここで全て終わらせたいんだ。
オレの夢を。」
万次郎はそう言ってなぜか優しく微笑んでいる。
「な…何言ってんだよ?マイキーくん
やめてくださいよ!わけわかんないですよ!
会っていきなりオレを殺せなんて…
俺はマイキーくんに会いたかっただけなのに!」
「会いたかっただけ……
八戒も死に際に同じようなこと言ってたっけ…」
「…八戒?…死に際?」
「夢を叶えるのは難しいね。
不良の時代を創る…その道目指して東マンは突き進んで行ったはずなのに…いつの間にかこんなんになっちまった」
「こんなんに…?」
「初めて人を殺した時…何も感じなかった。」
タケミチの額に嫌な汗が流れる。
生暖かい空気と、音のない静かなこの場所と、
目の前の人物…
全てが信じ難いものだった。
「そして思ったよ。
世の中の難しいことって大抵
人を殺せば簡単に解決するって…
邪魔なもんは消しちまえばいいんだって。」
万次郎はニッコリと笑った。
耐えきれなくなったタケミチの目が大きく見開かれる。
「違うよ?!マイキーくん!!」