第29章 rapture
「マイキーくん!!
…あの…っ…えっと……」
やっと会えたんだ…!
でも…
ランさんは…いないのか?
「マイキーくん…。元気…でしたか?」
「うん」
その優しい笑みと声色に
涙が抑えきれなくなった。
「あの…っ、…あの……っ」
「泣き虫は相変わらずか?」
「…すいません」
涙を拭いて笑みを返すと、
万次郎は静かに立ち上がった。
「ここにわざわざ呼んだのは頼みがあってね」
「え?…頼み?」
「ここに来て兄貴のこと思い出したらさ、
いろんな思い出が溢れてきて…
ガキの頃はいろんな奴らと殴り合って分かりあって笑いあって泣いたりして…そうやって東マンは大きくなって行ったんだなぁって」
やっぱりマイキーくんはマイキーくんだ!
みんなを殺してるわけない。
あの東マンのマイキーくんが殺すわけない。
そう思った矢先、
万次郎は上を見上げてポツリと呟いた。
「…東マンは変わっちまった」
「…え?」
「タケミっち、なんで東マンを出てったんだよ?
一緒にいてほしかった…
兄貴のように叱ってほしかった…。」
その言葉の意味を理解出来なかった。
けれどその声も口調も表情も、
見たことがないくらい悲しげで冷たく響いた。
「なんとか一人で頑張ったんだ。
でも…抑えられなかった。
オレがオレでなくなることを…」
「…マイキーくん…?
それ…どういう……」
その後説明されたのは、
命の恩人であるタケミチを巻き込みたくないからと過去で東マンを辞めることを促したドラケン、三ツ谷、そしてランの話だった。