第29章 rapture
「私が決めたことでもあんだよ、これは。
つべこべ言ってんじゃねぇよ。」
静かな声色でそう言ったランの眼光は、月に照らされて鋭く光っていた。
半間はドクッと威圧されたように動きを止めた。
ランは後日、タケミチから聞いていた。
未来で稀咲に殺された千冬や殺されかけたタケミチのこと、自分が聖夜に死ぬはずだったことや、一虎に会ったこと。
そして万次郎が闇に堕ち、ドラケンや三ツ谷を初めとした旧東マンメンバーの粛清を始めていたこと…。
「こんなカス共に耳を傾けるなマイキー!
不良の時代を創るんだろ?!」
稀咲の本気の焦りは
誰の目にも明らかだった。
「これから東マンはデカくなる!!
誰もがひれ伏す組織になるんだ!!
デカくなれば必ず闇は生まれる!!
俺はその闇を全て引き受けてやる!!
アンタを輝かせるために!!」
月は1人じゃ輝けない…!
「アンタには俺が必要なんだよマイキー!
俺はアンタの落とした影だ。
お互いが必要なんだ。
だから考え直せマイキー!」
万次郎は無の表情で黙ったまま
必死な稀咲を見つめている。
「綺麗事だけじゃ夢は叶わねぇんだよ!!」
「そんなことないよ…」
静かに口を開いたのはランだった。
「万次郎は、私の夢を綺麗に叶えてくれるよ」
「?!いや違う!!そんな甘い考えで何も生まれねぇんだよ!もう綺麗事はやめろ!東マンには俺が必要なんだよ!」
「お別れだ稀咲。その決めつけが夢を狂わせる」
「ま、マイキーぃぃぃぃぃ!!!」
万次郎は背を向けて行ってしまった。
新年一発目の集会のこの日、
稀咲は東マンから完全に除名された。