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progress ~東リべ卍~R18~

第28章 recollect*



風呂から出た三ツ谷は、
目の前の光景に驚愕し、頭を拭いていたタオルをパサリと落としてしまった。


「な…な…な…なにやってんだ?」


なんでランが母ちゃんに抱かれて号泣してんの?!



「なんでもないわよ」


「なんでもねぇわけねぇだろ?!
おいラン大丈夫か!どうしたんだ!
怪我したとこ痛いか?!それともまた頭痛」


にっこり笑って言う母親の
腕の中にいるランに急いでしゃがみこんで語りかける。


「違うのっ…ホントになんでもないの」


小さく聞こえた儚いランの涙声に
口を開けたまま固まる。


「…は?」


「本当になんでもないのよ隆。
それより早く髪を拭きなさい!」


「えぇっ?でもラン…」


「だいじょぶ、だから…本当に…っ」


そう。本当になんでもないのだ。

ただただこうして、
"お母さん" に、"誰か" に、

甘えたかっただけで…。
抱き締められたかっただけで…。


きっと人は誰しも、
人に甘えたり抱き締められたりしていないと
温もりを感じていないと、そんな存在がいないと

生きていけないんだ。

誰かに甘える、助けを求める、
それを自分に許していないと。


きっといつか壊れて
自分を見失って
どこかで境目を失って。



なぜだかふいに、万次郎のことが頭に浮かんだ。


両親のいない私には、恋人も恋人のお母さんもいてくれるけど、

両親もいなくて兄もいなくなった万次郎は、私が心の支えになってあげなくちゃ。
誰かに甘えるってことができない、優しくて不器用な総長の佐野万次郎にはいつもそれが足りてないはず。


今まで誰よりも強がり続けてきたのはきっと
私じゃなくて万次郎だ。
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