第28章 recollect*
「ランちゃん、あの子をこれからもいっぱい幸せにしてくれる?私からのお願い。」
「あ、はい!もちろんです!
いっぱい甘やかしていっぱい幸せにします!」
とは言っても…とランは
ココアの波紋に視線を落として自嘲気味に笑う。
「…ホントは甘えちゃってるのは私の方なんですけどね…隆、もっと甘えてくれていいのに…やっぱりしっかり者のお兄ちゃんだから私の前でもいつも凛としてる感じで」
「そんなことないと思うわよ。」
「え?」
「あの子の顔見てればわかるわよ。
私はあの子の母親だもの。」
フッと笑う顔は、かつての自分の母親を思い起こさせた。
「お母さん…」
呟いてしまってからハッとなって
急いで口に手を当てた。
「ごっごめんなさい!お母さんなんて呼んじゃった…」
(バカ私!さすがにまだ早すぎるよ!なんて…)
「いいのよ」
「え…っ」
「なにもしてあげられることはないけど、私のこと、お母さんだと思ってくれて。」
その言葉に大きく目を見開いたランはなぜだか無意識に涙が溢れてきてしまった。
かつての実の母親に向けられた優しく温かい、包み込まれるような眼差しに見えたからかもしれない。