第6章 recall
真一郎の死の真相を知った時は衝撃だった。
一虎と…場地が…?
「わかってる…2人は…俺のためにやったこと…だ」
仲間想いの万次郎はそう言った。
ランももちろん受け入れようと必死だった。
万次郎は涙を流さなかった。
ランも涙を流さなかった。
ランにとっても真一郎は、
本当の兄のような存在であり、そして初めて
"良い男"がこの世にいるんだということを一生懸命教えてくれた、まさにラン自身の生き方を変えてくれた人物だった。
こんなに泣きたいのに、どうして涙が流れないんだろう。
いや、私以上に、生まれた時から一緒で親代わりだった兄を亡くした万次郎のほうが泣きたいはずなのに、なんで涙を流さないの?
なんとなくわかる気がした…
きっと、
なにもかもを受け入れられないんだ。
仲間が自分のためを想ってしたという事実も、
真一郎が死んだという事実も。
そして、
心の中で泣き叫ぶ自分自身をさらけ出したら、
懸命に築き上げてきた自分自身が崩れる気がして怖いんだ。
"過去の自分を受け入れろ。
受け入れることで強くなる。
受け入れないままだと
どこかでその弱さに足元をすくわれる。
生きづらくなるだけだ。"
真一郎は昔、自分にこう言ってくれた。
そのおかげで私は今こうして生きている。