第28章 recollect*
「マイキーくんって親は?」
「ん?いねぇよ。
爺ちゃんとエマとランと4人暮らし。」
「へえ!お爺ちゃん子なんですね!意外!」
「…兄貴が俺らの親代わりだったんだ。
何をするにも俺らは10個上の兄貴の後ろついてってさ。いろんなこと兄貴に教わった。」
バイクで走る万次郎の後ろ髪をジッと見つめながら、タケミチはその儚げな言葉に耳を澄ます。
「たまに、わかんなくなる…
当たり前のようにいた兄貴がいない。
それがどういうことなのか理解できなくなる…」
「・・・」
「そういうときはいつも頭が真っ白になって
右も左も上も下もわかんなくなっちまう。
何が正しくて、何が間違ってんのか…」
「…マイキーくん……」
マイキーくんはわかってるんだ。
このままじゃ自分がおかしくなっちゃうんだって。
深い闇を抱えてるって…
「兄貴の周りにはみんな集まってきた。
東京中の不良たちが自分より弱い兄貴を慕った。
東京中の猛者たちを先導する兄貴はいつでもキラッキラに輝いてた。
あの人が後ろにいるから負けねぇ。
みんなきっとそう思ってた。」
万次郎はバイクを停め、
どこか遠くを見るような目をしている。
「マイキーくんみたいっすね!」
しかし万次郎の表情はあまりにも寂しげに見える。