第26章 reindeer
三ツ谷はランの頬に手を滑らせ、
ゆっくりと顔を近づけた。
近くで見ると、
うっすら化粧を施しているランの顔は、あまりに色っぽく見えて思わずドキドキと鼓動が波打った。
すぐにパチリと閉じられた
いつもより長い、マスカラをしたまつ毛。
いつの間にまた色を落としたのか、
ピンク色の唇に唇を重ねるのと同時に
三ツ谷もゆっくりと目を閉じた。
僅かにリップ音を鳴らして離したあと
もう一度啄むように口付けて
角度を変えて舌を滑り込ませた。
一気にライムの香りが広がる。
待ち構えていたようにランの舌に絡め取られる。
初めの頃と比べて随分と上手くなったと思った。
お互い様なのかもしれないが…
そもそも自分たちは
キスをしすぎなのではないか…?
それくらい、
しょっちゅうしている気がした。
「ん…っ…」
僅かなその儚げな声がランから漏れただけで、三ツ谷はヤバいと思って唇を離した。
「ランっ…これ以上はやべぇから…」
その意味を察したのか、
ランは少し困ったような笑みを浮かべた。
「お願い聞いてくれてありがと」
まだお互いの口元からライムの香りが残っている。
結構強い香りだと思った。
ランの濡れた口元と
嬉しそうな表情にこの上なく愛しさが込上げる。
三ツ谷はたまらずランを引き寄せ、
ギュッと抱きしめた。
ランの腕も、しがみつくように背中に回った。
「ふふふ…っ、大好き…」
「…俺も…大好き…」
普段は照れくさくて言えない言葉も、
今日だけは何故か素直に口にできた。